出会い口説きALLOK

デキル男のためのライフスタイルマガジンです。裏モノJAPAN監修の出会いや口説きに体当たりで挑戦したブログです。

結婚の挨拶を兼ねて相手の両親の貧困具合の調査をすることに

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オグの実家、東北へ行くことになった。目的は、両親の貧困具合の調査だ。借金が数千万あり、娘にまで無心してくる親とはどんな人物なのか。ひどいレベルなら、結婚など到底ありえないわけで。
新幹線と在来線を乗り継ぐうちに、とんでもない田舎にやってきてしまった。車窓から見えるのは山と田んぼだけだ。隣でオグは居眠りしている。事前に親には、彼氏をつれていく旨は伝えてあるようだが、決して結婚などではなく、ただ付き合っているだけの人が顔を見せにくるだけ、ということになっている。実際、オレもその程度の意識でしかない。服装も普段着だし。夕方に最寄り駅に着いたら、オグの母親が迎えにきていた。身なりは普通、車も普通。貧困な感じはしない。オレにとって彼女の親に会うという経験は初めてのこと。緊張しながら後部座席に乗り込む。
「赤澤さんはご出身はどちら?」
「大阪です」
「あら、こんな田舎は初めてでしょう」
「まあ、そうですね」
さしさわりのない会話をしながら、車に乗って30分。到着したのは、土間があるような昔ながらの古い家屋だった。いかにも田舎の農家といった風情だ。現にオグの家は兼業農家らしい。
ざっと外観を見渡す。借金取りの張り紙などはなく、窓が叩き割られてもいない。本当にごくごく普通の古い民家だ。
家では父親が待っていた。畳敷きの居間に通され、落ち着かなく腰をおろす。
「どうも、ゆかり(オグのこと)の父です」
「あ、赤澤です。初めまして」
 身なりは普通。優しい雰囲気のお父さんだ。
 部屋を見る感じでは、特に貧困の色はうかがえない。いや、金を借りてるのだから貧困をごまかせているのだとも言えるわけで、安心はできない。
 現在、夜の7時。まずは食事の準備ということで、お父さんとオレを居間に残し、お母さんとオグは台所へ消えてしまった。気まずい空気に包まれる。
 今回のオレの目的は、借金問題について問いただすことである。いったいどこからいくら借りているのか、親族に返済義務はあるのか。そのあたりを聞き出さねば、こんな田舎にまでやってきた意味はない。が、まだ核心に入るのは早い。とりあえずはどうでもいい会話で時間をつぶすしかない。
 お父さんが口を開いた。
「東北といえば大泉逸郎でね」
「は?」
「歌手の大泉逸郎。孫って歌があるでしょう」
「はあ、そうなんですか」
のっけから何を言い出すんだ。孫の顔が見たいと遠回しにアピールしてるんだろうか。あんたらの借金次第ですよ、それは!
「本当にこのあたりは何もなくてね」
「いや、自然が多くていいですよね」
「昔から自殺が多くてね、このあたりは」
 何で自殺の話題が! これまた借金苦で自殺もありえることをほのめかしてるんじゃないだろな。話題はポンポンと飛んだ。
「娘たちが大学へ行くときは、銀行からお金を借りないといけないと慌ててね」
 ギクッ、来たか借金トーク!
「まあ、ゆかりは写真が好きだとか言うけど、私は娘の撮った写真なんか見たことないね」
 あれ、テーマが変わってしまった。せっかくいい流れだったのに。
 まもなく手作りの料理がテーブルに並び、4人での食事が始まった。さすがに食べながら借金に突っ込むわけにもいかず、他愛のない会話で場を過ごす。
 それにしてもこのご両親は今日のこの顔合わせをどういう意味と認識しているのだろう。本当に彼氏が遊びに来ただけと思っているんだろうか。まあ、オレもスーツを着ているわけではなく、あらたまった印象は与えていないので、結婚、とまでは考えてないだろうが、まさか借金を探りに来たとは思っていないのでは。そして食事後、また2人きりになったところで、お父さんが口を開いた。
「ゆかりから、何か聞きたいことがあるって聞いてるんだけど」
うっ、オグが軽く話を振っていたようだ。さてどうしよう。ストレートに尋ねるべきか。でもそれって失礼じゃないのか。いや、聞かなきゃ何しに来たかわからないぞ。
「いえ、まあ、特にこれといって…」
「ああ、そう」
 聞けなかった。ダメだ。ドタンバで怖気づいてしまった!
 結局、核心に迫ることなく2時間ほどが経過し、さすがに泊めてもらうわけにはいかないので、最寄りのホテルで宿泊することになった。見送りに来たオグが尋ねる。
「どうでしたか?」
「どうって?」
「心配はなくなりましたか?」
 なくなるわけがない。だって借金について何も聞き出していないのだから。
「いや、まあ、変な人じゃないことはわかったけど…。まあ、イイ人だと思うよ」
「そうですか…」
「うん、まあ、本当にいい両親に育ててもらったことはわかったし」
しどろもどろになりながら、なんだかよくわからない感想を答えて、人生初の『彼女の自宅訪問』は終わったのだった。
もうひとつの問題。再就職と新居の問題については、当初の目論見とはまったく違うオカシな方向に進んで解決した。
もう大阪にこだわらず関西ならどこでもいいやと、兵庫県の田舎の会社に応募したところ、あっけなく採用され、それに伴い、兵庫県の田舎のマンションを借りられたのだ。
10月から、赤澤慎吾は兵庫県の片田舎で生きていくことになった。まったく土地勘もなにもない場所でひとりきり。オグとは親の借金問題をほったらかしにしたまま遠距離恋愛という形だ。いったいオレの人生はこれからどうなるのか。皆目、見当がつかないが、とりあえず関西のみなさん、今後よろしくお願いします。