この女は男の誘いを断らないんですよ。情が深いっていうのかなあ。ホント最高ですよ。
目を細めてニヤニヤする運ちゃん。わかったわかった。オレは疲れてるんだ。お国自慢は他の客にやってくれよ。なんてことがあったことすら忘れていた締め切り過ぎのある夜、酒の席でドラゴン今中氏に出会った。御存知ナンパライターの第一人者。こと女に関しては日ごろから辛酸をなめさせられているオレだ。ここは、ぜひ参考になる話を聞いておきたい。
と、ビール片手に近づけば、ありやりや、ドラゴンさんすでにスピード全開だ。
「オレも日本全国でナンパしてるーけど、やっぱ地方によってぜんぜん違うね」
「ほほーう。じゃあ、一番ナンパしゃすい土地なんてのもあるんですか」
「そりゃ熊本に決ってるじゃん」
「えつ」
熊本の女性はすれていない。路上で声をかけても、キャッチ慣れした東京なら軽く無視されるが、熊本のコはまず立ち止まって話を聞いてくれる。東京に対する憧れも強い。自然、オチやすい。ってウソでしょ。
「マジだって。中には声かけて15分後にはカラオケボックスでHした子もいたからね」「ちょっと待ってくださいよ。そりゃたまたまでしょうに」
「わかってないなー。とにかく一度行ってみなって。ヤリまくれるよー」
女を知り尽くしたナンパライターと地元出身のタクシー運転手が熊本女は日本一だと口を揃えて力説するこの事実。あながちウソでは…。いや、かなり信愚性が高い話ではなかろうか。誘いを断らぬ女がいる街でナンパ三味。しかもヤリまくり。く〜、
こんなオイシイ話があってい-もんかね。なんだか想像してきただけでもう…。
キミみたいな熊本美人を探しにきたんだ
4月某日。ホテルにチェックイン
出てまもなく、公園のベンチにスーツ姿の女が1人座っているのに気づいた。スラッとのびたアンョ、サラサラのストレートヘアに菊川怜似のフエイスがめっちゃソソる。普段なら声をかけるのを臆するムリ目系だが…。えーい、いっちまえー
「こんちわー、今ヒマ?」「あ、一応仕事中なんだけど…」
「ホント?サボってるように見えるけど」「ハハハ、休憩中なの」
彼女の名はカオル(仮名・22才)。雑誌広告の営業をしているらしい。
「こんなにキレイな子が来たらオレならすぐハンコすね」
「ヤダー。ねえ、こっちには何しに来たの?観光?」
「キミみたいな熊本美人を探しにきたんだよ」
「もーっ、何言ってんの」「あ、そうだ写真撮らせてよ」
一眼レフを向けてパシャパシャとストロボを浴びせる。おっはだけたシャッからピンクのブラがチラチラ。たまらーん。
「いいねー、キレイだねー」
「ふふふ」
マジで美人だった
「ねえ、仕事が終わったら飲みに行こうよ」
「んー、どうしよっかなー」
イケる。オレの必勝パターンだ。やはり熊本には魔物が棲んでいたか。
「ゴメン、これ」
オレの鼻先に左手をかざして微笑む彼女。キラリと光る指輪って、まさか・・
「もっ結婚して4年なの」
クッ。そりゃ肥後もっこすだってほっておかねーか。
「で、でもさ、メシくらいだったら問題ないんじゃない?」
「ダンナは別にいいけど。子供にゴハンあげないとね。うふ、ごめんなさい」
そんな飛び道具出されちゃ撃沈だよ。けど、このフレンドリーさ。熊本女、期待できそうだぞ。
現在、悪質なキャッチセールスの被害が
午後6時。オレはホテルの窓から下通を見下ろしてほくそ笑んでいた。ギャル率が昼よりも格段にアップしている。これで浮かれるなという方が無理な話。入れ食いってヤツだな、オイ。んじゃ、さっそくかわいい金魚ちゃんでも釣りにいきますかー。
「彼女、こんちわー。ねえドコ行くの?」「……」あれ、どしたの?ツーンとおすまし顔で通り過ぎちゃって、それってムシ?けっこうけっこう。獲物はいっぱいいるんだよーん。
「あ、ちょっと今いい?」「……」(スタスタスタ)
「こんにちはー」「……」(スタスタスタ)
おいーどうなってんだーサムすぎるじゃねーか。オレが凍死してもいいのか
いや、シカトならまだましなのだ。中には、オレを見ただけで進路を奪え、早足で逃げていく輩までいやがる。コラッー変質者じゃねーぞ。うーん、何だかとっても変。そりや、ドラゴン氏とオレではポテンシャルに雲泥の差があるのは認めよう。でも、あまりにも話が違うではないか。
「お兄さん、たまってそうだね。いいオマンコ紹介するよ」「ハハハハ」
ポン引きがすりよってきた。すでに30人以上にフラれまくった今のオレにはポン引きの声すら温かく感じる。ねーねー、ちょっと聞いてくれます?
「…というわけなんスよ。熊本の女ってのは冷たいっスね」
「そりゃ、こんな場所でナンパする兄ちゃんが悪いよ。あきらめてピュッと抜いてさ…」「アハハハ、その手には乗りませんよ」「だって、ホラ。聞いてみな」
ポン引き兄ちゃんがアーケードの天井を指差す。と、下通りアーケードでは現在、悪質なキャッチセールスの被害が続出しております。皆さんお気をつけくださいーなっ、なんじゃこのアナウンスは?やけにみんなのオレを見る目が冷たいと思ったらこういうことか・・
ポン引き兄ちゃんによれば、昨年から熊本の繁華街では大手キャバクラチェーンが台頭、路上にスカウト連中が激増したらしい。
「最近、この辺もガラが悪いから女のコも怖がってるよ」
人問の心無い開発によって、またひとつ楽園が消えていく。ああ世知辛い…って、そんな感傷にふけっている場合じゃねーぞ。ナンパしたかったら「東バイパス」へ行けば
アーケードとおさらばし、その外にあるパルコをポイントに定めたのが正解だったらしい。
10人ほど声をかけた後、シスター系辺見えみり似ギャルの足が止まった。
「ねえねえ、ゴハンだけ一緒にどう?おごるからさ」
「ん?アンタ、この辺の人じゃないっしょ」
「あ、わかる?出張に来ててさ。ひとりぽっちでメシ食っても寂しいじゃない」
「じゃ、アタシの知ってる店に行く?食べ物とか少ないけど」
おおキミとお話できるんだったらどんな店でもお供しますとも。果たして、彼女が向った先は「ピンクスパイダー(仮名)」というキャバクラだった。
「なんか今日はヒマみたいだからさ、ゆっくりしていって」
「…あ、うん・・」
何だか一杯食わされたって感じもしないではないが、どうせあのまま続けてたって成果は期待できないんだ。こうなったら本腰入れて飲んじまうかーすでに彼女、響子(仮名・23才)は夜の蝶に変身している。よっしゃ、しっかり相手してくれよー。
「ぷはーっ。ねえ、ところで熊本の女のコってさ、ナンパとかすぐに付いてっちゃうんじゃないの?」「えー、そんなことないよ」
「そうなの?わざわざ来たのにガッカリだね、マジで」「そんなにナンパしたかったら東バイパスでも行けば」「ん?」
聞けば、東バイパスとは熊本の超有名なナンパスポットらしい。でも、そういう場所は車がなければお話にならんでしょ。
「そーね。とりあえず球磨焼酎でも飲んで忘れなよ。あ、アタシは体調悪いからカルーアね」
「ふーっ。で、響子ちゃんはカレシはいるの?」
「っーん…。もういないみたいなもんだけどね」
「何それ?フリーってこと?」
「あ、もっ時間だけど・・」
「延長ーで、どうなの?いるの?いないの?ねえ・・」
熊本初日の夜はこうしてゆっくりと更けていった。
翌朝。オレは二日酔いの体をひきずりレンタカー屋を訪れた。一晩考え抜いた結果、やはり東バイパスに挑んだ方がいいとの結論に達したのだ。
「すいませーん、車を借りたいんですけど」
「えーと、今はファミリアしか空いてませんね」
ダッセーなー。もちろん、借りるけどね。さて、準備はできたが、夜までボッーとしているわけにもいかん。ダメ元でもう一度下通アーケードを攻めてみっか。結果は…ああも、いったいオレは何人にフラれにゃならんのだ。徒労感が一気に体を襲う。そんなタ暮れ、ふいに携帯が鳴った。
「あー、響子だけど。明日は帰っちゃうんでしょ。アタシ、仕事休みだから一緒にゴハンでもどう?」
「えっ、ウソ、マジ行く、すぐ行くー」
わかる人にはわかるだろう、事の重大さを。キャバ嬢がアフターや同伴ではなくプライベートで会いたいと言っているのだ。いやー、
コンドーム多めに持ってかねーとなあ。
午後8時。待ち合わせのゲーセンに響子が手を振って現れた。昨日の夜は、商売丸だしだったのに、やっぱおまえも東京の男に憧れていたんだよな。よしよし、たっぷり可愛がってやっからな。ん?誰?隣に1人女のコがいるけど誰かしら。
あっ、友達のリョウ。話さなかったけ。お店でもチョー仲良しなんだ
「ハハハ、そっ…」
ま、彼女には頃合いを見計らって消えてもらえばいいか。で、どこ行く?馬肉専門店?いいよいいよ。盛りあがろうぜー。
「えー、とりあえず生3つ」「あ、アタシたちはコーラで」
「あ、そう・・」
テーブルに馬刺や馬肉料理が次次と並べられる。この白子みたいなものは何ですか?「あ、これは馬の脳味噌。意外とオイシイのよ」「へ、へえ・・」
何食わぬ顔でパクつく響子。カワイイ顔してなかなかやるねー。
しばらくして、店員がハート型をしたスライス肉を運んできた。
「えー、こちら馬珍です」珍?まさかそれって・・
「きゃー、こんなのはじめてー本物みたいな味とかしちゃったらどうしよ」
「ハハハ、響子、本物だって。チョーヤバいよ、アンタ」
2人のキャバ嬢が薄切りペニスを箸でつまみあげ盛りあがる。なんだかエローい会話。ああ、早く響子とツーショットになりてー。リョウがトイレに立った。今だ。今しかない。
「ね、せっかくだから2人で飲み直さない?」
「ゴメーン。アタシたちこれから行くところあるから」「……」
ふっ、いつものことさ。やはりキャバ嬢に心をときめかせたオレがバカだったよ。
午後9時。ファミリアで国道をつき進み、東バイパスに到着。ここが最後の砦だ。どうやら、路肩に停車しているのはナンパ待ちの女性らしい。なるほど、そこに車を横付けして声をかけりゃいいんだな。さっそくあのワゴンRにいってみっか。
「こんばん…わ」運転席にいたのは眼光鋭いヤンキーだった。
「ハハ…。お邪魔しました・・」よく見りゃヒトミ似でカワイイ顔してるけど、さすがにオレじゃ相手にしてくれねーだろ。と、オレの横をローダウンしたビュイックワゴンが窓全開のステレオハイパワーで通過する。
ひゃー、中にはミラーボール。危なくねーか、それ。ビュイック野郎がさきほどのワゴンRに接近する。バーカ。そこはハズレだよ。ガンつけられるのが関の山……ではなかった。なんとヒトミ似の彼女、窓から乗り出して実に愛相よくナンパに応じているではないか。ザケんじゃねー。オレのときはあんな笑顔見せなかったくせに。男は車じゃねーぞー
深夜2時。ォレは人がまばらになったアーケードにいた。バイパスで玉砕した後、夜遊びギャルに狙いを定め奮闘したものの、もはや限界。だめ。完全にギブアップ。フヌケだなんだといわれよ』っともかまうもんかー正面からスクーターを押しながら1人の女がやって来た。だからどーした。どうせダメに決ってるじゃん。一応声はかけるけどさ。
「こんばんはー、朝までヒマだったらメシでも食いにいかない」
「えー?」「ダメだよね。ハハハ、気をつけて帰ってね」
「お腹減ってないから、カラオケだったらいいよ」「ええ」
内山理名を少しヤンキーっぼさせた彼女、なんでも原チャリが家まで持ちそうもないので、どこか夜明かしする場所を探していたらしい。おお、ラッキーーキミこそ天使だーカラオケでも信じられない事が起きた。ひととおり熱唱する彼女、リサ(仮名・20才)が肩に持たれかかってきたのがこの展開はどこかで…。
あのドラゴン今中と全く同じが声をかけて約1時間後。リサは煙をあげる阿蘇山のように熱い体をオレに堪能させてくれた。