出会い口説きALLOK

デキル男のためのライフスタイルマガジンです。裏モノJAPAN監修の出会いや口説きに体当たりで挑戦したブログです。

クラブDJはモテるのかモテないのか

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レコードを回し、客を躍らすディスコやクラブの花形ボジション、DJ。私はその花形をキープし続けてきた男である。私が皿回しに惹きつられた直接の理由は他にある。早い話が、女にモテまくるのだ。

イベント終了後、女性客をお持ち帰りするなんて日常茶飯事。大してカッコ良くもないのに、「DJ」というだけで、女の見る目がガラっと変わるのだからタマらない。ところが、その神通力もここ3、4年ほど前から目に見えて陰りが出始めた。一番の原因は、ブームの影響でDJ人口が爆発的に増加したことだろう。ともかく、若くてかっこいい輩にホイホイDJになられた日にゃ、肩書きのみでブてフイいわそうってのが無理な話。いやー、お寒い世の中になったもんでんなあ。

確かに私は、雑誌に載るような売れっ子ではないし、知名度もない。ただラッキーしてただけ、とも言えなくはない。だが、それでも納得しかねる。私はクラブの花形、DJ様なのだ。三十路だからってまだまだガキには負けん。
今年2月13日のことだった。

「テリーさん、ソウルのクラブでイベント開いてみれば?絶対モテまくりですよ」

発言の主は、行きつけのアジアンバー『アジール』のマスター、阿部さんである。アジア諸国、特に韓国文化に精通しており、私も一目置く存在なのだが、阿部さん、ソウルのクラブがどうしたって?
「つまりですね・・」

氏の話を要約するとこうだ。最近日本文化の一部受け入れを許可した文化解放でとにかく東京と名の付くものはエブリシング・オッケーで、こと音楽に関しては熱狂的らしい。

「だからこそソウルに行くんですよ、テリーさん」

なるほど、そのアイデア、実に素晴らしい。…けどワシ、超無名DJやで。誰が来んねん。

「大丈夫。いくら三流でも、Jポップ好きな子にとっちゃフロムTOKYOの文字だけで一流韓国DJより格上なんだから。もうウハウハでズソュズンュですって」

「マ、マジっすかー・…でもどうやって交渉すんの。」

「ソウルに知り合いのクラブが何軒かあるから、打診してみますよ」

うーん。これはまたとないモテモテ復活のチャンスなのかもしれない。折しも、昨年来日した韓国人女優キム・ハヌル(韓国の松たか子と言われている)を雑誌の仕事でインタビューして以来、大のコリアン美人ファンになっていた私である。彼女らと裸のお付き合いができるかもしれんなんて。ええのー、ええタイミングやんけ。ククク、復活じゃ。わしゃ韓国行って女喰いまくるんじゃーいー

「阿部さん、カムサハムニダッ」

「うん。私もこういっの大好きだしね。がんばってみますよ」

会場はあっさりと決まった。東京の渋谷に当たる若者の街、シンチョン(キャパ200人)なんと、クラブ側からの要請で、金、土の2夜続興行らしい。
クラブイベントは通常1、2カ月前からフライヤー(チラシ)を大量に作り、会場となるクラブにはもちろん、レコード店や服屋、バーなどに置いてもらうのが一般的だ。しかし、本番まで1週間。フライヤーにかまけている時問はない。というか、こんな短期間じゃ、配布できても効果はないだろう。そこで、クラブ側との打ち合わせは阿部さんに任せ、私はインターネットで告知を試みた。韓国のネット普及率が日本より数段高いのは周知の事実。的外れな手段ではないだろう。

掲示板は、閲覧者の延べ人数がカウントされるシステムなのだが、なんと最初の3日間で200人を軽く突破、300人をも超してしまったのだ。うーん、嬉しいけど気いつけなアカンで、キミら。おっちゃん、パクパクにしか興味ないねんから。もっとも、その事実にだらしなく鼻の下を伸ばすほど私も愚かではない。

イベントは客の盛り上がりが全て。いくらフロム東京の大先生とはいえ、場を白けさせては、モテモテ身分を享受するどころか、誰からも声をかけられぬ可能性とて十分ある。
2月22日、午後3時。インチョン空港からまっすぐシンチョンへ。そこでー日早く到着していた阿部氏と合流してから、一路クラブへ向かった。
「いやー、お客さん来るかなー」

浮かない顔して阿部さん、どうしたの。

「いやだから、お客さん来るか心配なんですよねえ」「……」

まったくタワけたことを抜かすオッサンである。アンタがオレを炊きつけたんやろが。DJはモテモテやと。ウハウハのグンュズンュやと。そうじゃなかったのか…っておいーその紙の束、なんやねん。なんで道行く女に片っ端から配っとんのじゃ。ちょっとー枚見せんかい。白紙に手書きのハングル文字。意味わからんがな。ん、英語で何か書いてあるぞ。

DJショウ?・ショウ?ハハハ、わしゃ、田舎のデパートに来るマジシャンか。

「もう阿部さん、ダサいから止めようよ」

「いや、だって何かしないと心配で心配で」

「っていうか、かえって客が来なくなるよ」

重いレコードケースと青い顔の阿部さんを引きずり引きずり、午後到着。ふと出入りロ付近に目をやれば、キチキチのドレッにパーマを当てた女の子が立っている。カワイイ。お客さんやろか。と、彼女が私たちに気づき、近ついてきた。

「アニョハセョーチョヌン・テリーウエダ・イムニダー」

驚いたことに、どう見ても25、26才くらいにしか見えぬこの彼女、実はジャングルのオーナーだという。へー、立派だねえ、若いのに。

始まって1時間。客は誰も来なかった
オフィスビルの地下一階にあるいンャングル』は何ともオシャレなクラブだった。四方の壁は剥き出しのコンクリート。広さも想像以上だ。しかし、安心したのも束の間、DJブースを見て思わず私はたじろいでしまう。準備がまだ完了していないのだ。おい、ノロノロ機材をセッティングしとったら始まってまうぞ。

…とっくに始まっていた。客が誰ー人来ないので、ぜんぜん気つかなかったが、すでに開演時間の7時から20分も経過している。嫌な予感…。ま、でも、適当にやってりゃ、そのーっちドカドカ来るでしょ。さっそくフロア正面ステージ脇のDJブースに入り込み、スタンバイ。

「客はー人も来とらんけど大丈夫ですか、テリーさーん」

阿部さんの卑屈な声がフロアに響く。すでにイベント開始からー時間が経つものの、客が来る気配はゼ口。うーん、ホンマにヤバイかもしれん。いい加減、来いよっ。祈りが天に通じたか。間もなく入り口の扉から6人の女性客が顔を覗かせた。あれ、でもキミら、もしかしたら15、16才くらいじゃないのか?いやあ、ガキンチョはな。ウソウソ。来てくれただけ有難いっすよ、マジで。

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どりあえず、コヤツらを盛りあげなければ後が続かない。ふふ、とっておきの曲あるぜ。
が、コーラを飲む6人の未成年者は無表情のまま。おかしい。んじゃ正攻法でと、韓国で依然絶大な人気を誇るx-JAPAN並びにh-deの曲を連発したところ、ようやくキャーという声。よっしゃ、工工ぞ。火のつきかけた焚き火にフうー息を送り込むように、ラルクアンドシエル、ルナシーと手堅いフインで攻め巻き返しを図る。そして、曲をGLAYにチェンジしよーっとしたそのとき、阿部さんがズカズカとフースにやってきた。

「オーナーがね、もっそろそ終らないかって・・にバーカウンターの中には、精一杯作り笑いを浮かべた美人オーナーの姿があった。サンキュー」

オーナーからムリ目のねぎらいを受け、私はガックリ肩を落とした。よもや2時間半でイベントが打ち切られるとは。DJ人生初の屈辱である。が、韓国ではこういうことが珍しくなく、客の入りが悪いと、即座に店を閉めてしまうらしい。それが証拠に、オーナーは東京からやってきた人気DJの体たらくを責めるでもなく、

「明日は頑張ってね」と屈託ない。30分後、意気消沈の私と阿部さんはシンチョンの寒い街並みを歩いていた。マズイ、実にマズイ。初日でたった6人しか動員できないのでは、明日も言わずもがな。策は…ない。私たちは一景蕗を浴びるほど飲む以外、他になす術もなかった。

翌日は、朝からシンチョンに出向き、フライヤーを大量に配布ずることにした。その数500枚。ダサいだの、安っぽいなどと文句を言ってる場合じゃない。阿部さんと協カし、ようやく半分くらいを配り終えたのが午後3時

「コレだけやればいいでしょ。いったん、ホテルに帰りませんか」

私が阿部さんに声をかけたとき、ピリピリピリ、ピリピリピリ、彼のレンタル携帯が着信した。
「朴。魯ユ且己甚叫叫」どうやら相手は韓国人らしい。

「テリーさん。ズヒョンってコ知ってます??」

韓国の18才以上の子はもっばらアメリカや自国のH-POPやテクノを好み、Jポップや韓国ポップなどはほとんど聞かない。むしろ、ガキっぽいとバカにしているー。愚かすぎる。よく考えりゃ、日本だって同じではないか。女子大生のほとんどはスマップのコンサートより、ヒップホップのライブに関心を持つもんなあ。
ズヒョンが会場にやってきたのはイベントが始まって2時間ほど後のことだ。保険だ保険だと軽んじていたが、今の私には彼女しかいない。現在、午後10時。イベントは0時ンャストでお開きだからその後ゆっくり飲もう。休憩タイムに、彼女とそう約束していた。ならば残り2時間をどう使っかはおのずと決まってくる。大物DJここに極まれり。そんな光景をズヒョンの目の前でたらふく披露してやるのだ。

えげつないくらいテクノの曲オンリーで攻めるよう路線を変更すると、客は今まで以上に躍り、歌った。ス口ーな曲で休むヒマを与えないので、フロアは完全に酸欠秘態。ズヒョンも皆に混じって飛び跳ねている。いいぞ。限界まで客に体力を使わせた後、オーラスに宇多田ヒカルのファースト・ラブでトドメ。

韓国の若い女の子が好んでカラオケで歌う、バラードの名曲だ。曲が流れると、たちまちフロアから大合唱が沸き上がった。ジーン。恥かしいけどジーン。オレって意外とスゴイじゃん。気がつけば、汗だくになったズヒョンが私を見つめながら歌っている。その誇らしげな顔は、ハッキリと語っている。ここにいる大勢の客を狂わす罪な人、本場日本からきたあのスターはアタシの友だちなのよ、と。鳴り止まない拍手の中、イベント終了。実に満たされた気分でンャングルを後にする。もちろん私の側らには、ズヒョンがいる。
焼肉を一緒に食い、テクノクラブで踊り、カクテルをガンガン飲ませる。酔ったズヒョンは終始、腕にまとわりつき、もはや完全にグルーピー状態だ。クタクタのべ口べロでホテルへ向かう私の後を、彼女は嬉々とついてきた。