出会い口説きALLOK

デキル男のためのライフスタイルマガジンです。裏モノJAPAN監修の出会いや口説きに体当たりで挑戦したブログです。

コミケ会場のコスプレナンパはオタク男が唯一輝ける場所

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「このキャラに似てるからコスプレしてよ」

「岡田くん、今度の土曜、売り子やってくんない?」

20才の夏、女友達の好恵にある依頼をされたことが始まりだった。彼女は、格闘ゲーム「キング・オブ・ファイターズ(KOF)」に登場するキャラを取り入れた同人漫画を描いていて、そいつを晴海のコミックマーケット(通称コミケ)で販売したいのだという。

「こういうのは男の子のほうがよく売れるんだってば」なんでも好恵の作品は、男性キャラ同士の恋模様を描いた、いわゆる「やおい系」。その手の漫画を好むのは女の子に決まっているから、売り子は男にしたほうがいいというのだ。当時彼女もいなかったオレは、土日はいつも暇を持て余していた。どうせ昔の友達とつるんでバイクに乗ったりゲーセンで時間をつぶすぐらいしかすることはない。売り子ぐらいならやってやるよと簡単に了承した。
ところがこの女、変な注文をつけてくる。

「ねえ、岡田くんこのキャラに似てるから、コスプレして売ってよ」

好恵の指さすそのキャラは「草薙京(くさなぎきょう)」という名の男で、学ランに白いハチマキ(包帯?)という出で立ち。ゲーム(KOF)内では主人公的役割を担っているらしい。大きな瞳に高い鼻という典型的なアニメ顔ながら、言われてみれば確かに顔の形や体型は似てなくもない。しかし何が悲しくて20才の健康的な男がコスプレなんぞやらにゃならんのか。

「ちょっと、それは勘弁してよ」

「いいじゃん。岡田くん、高校んとき短ラン着てたじゃん。あれ残ってるでしょ」

これだから昔を知っている友達は困る。結局オレは、白シャツに学ランを羽織るぐらいなら恥ずかしくないだろうと説得され、渋々引き受けたのだった。
会場はだだっ広く、大勢の男女が人り乱れていた。自衛隊関係の本を売っているヤツや、看護婦のことだけを調べた同人誌を並べるヤツ。何のキャラかよくわからんが、コスプレ姿の者も多く、あちこちで楽しそうにやっている。まったくオタクってやつは。「岡田くん、こっちこっち」

「はいはい」

学ランに白ハチマキ姿で、同人誌販売のブースに座り、好恵制作のやおい本を並べて客を待つ。1冊600円。こんな本のどこが面白いんだか。金出して買うようなもんかよ。しかし世の中にはいろんな人がいるもんで、あれよあれよと本がさばけていく。列に並んでいるのは、みんな女の子ばっかりだ。君タチ、親が泣くよ。初めてのコミケは、珍しい経験もさせてくれた。トイレに向かって歩いていたとき、1人の女のコが声をかけてきたのだ。

「すいませーん。写真撮らせてもらえませんか」

セクシーな女のコスプレイヤーたちがあちこちで写真か撮られているのは見かけたが、まさかこのオレまで。何が珍しいんだ。ただ学ランを着て腕まくりしているだけだぜ。「あ、どうぞどうぞ」

「ありがと、ございまーす」

どうせロクでもないオタク女なんだろうが、写真を撮られるのは悪い気分じゃない。と、今度は別のコがやってきて、「お姫さま抱っこをして写真を撮ってくれ」と大胆なお願いをしてきた。

お前、知りあいでもなんでもないだろうに。こんなオレのどこがいいわけ?

この後もオレは、トイレに行こうとするたび誰かしらに呼び止められ、写真を撮られた。もつタレント気分である。普段はモテないのに、どうしてこんなことになるのか。不思議に思ってよくよく会場を見渡すと、女のコスプレイヤーたちがそこそこの容姿なのに対し、男は明らかなオタクだらけ。ひょろひょろモヤシ君やデップリ眼鏡君など、こりゃちょっとヤバイつしょといった男たちが上半身裸になったりしている。なるほど、ここでは人並の容姿さえあれば人気者になれるのだ。好恵の同人誌もどうにか7割程度売れ、一安心。しかも帰り際にまで写真や握手を求められるモテモテのオレ。コミケ、悪くないじゃん。
中学以来の遊び仲間にこの日の話をすると、みんな面白がって乗ってきた。そんなにモテるならオレも行きたい、連れていってくれと大ハシャギだ。大規模なコミケが開かれるのは、毎年夏と冬の2回だから焦ってもしょうがない。とりあえず今度の冬のコミケにはみんなで参加しようと取り決め、それまでにできるだけゲーセンの「キング・オブ・ファイターズ」に金を使い、キャラの特徴、少なくとも名ぐらいは覚えるよう心がけることにした。20才にもなってバカな連中である。

そして冬、オレたち総勢6人はコミケに出陣することになった。オレは前回と同じ、草薙京。準備は学ランだけで金がかからない上、ゲーム内でも中心人物なため知らぬ者はいない、ナンパには最高のキャラだ。

「お前、金髪だから紅丸(ベニマル)ね」

「じやあ、オレ、椎拳崇(シーケンスー)にするわ」

「オレ、テリー・ボガード」

みな、思い思いのキャラを選び、服を揃える。幸い登場人物の多いゲームなので、単純な服装のキャラクターにすれば金はかからない。貧乏なオレたちにとって、重要なポイントだった。ただ、金髪のため紅丸にならざるをえなかった者は、少々苦労を強いられることになった。紅丸はどういうわけだか髪が垂直に立っているキャラなのだ。髪のセッティング法など知らないオレたちはそいつの足を公園の鉄棒に引っかけて、逆さまの状態でダラリとなった髪をスプレーで固めた。

「早くやってくれよ」「あせるな。もうすぐ」

「ああ、ダルい。落ちるぞ」「待て、我慢しろ」
幼児連れのお母さんたちは怪評な目でオレたちを見ていた。コスプレもこれはこれでなかなか苦労するのである。
前回と違い、今回の目当てはナンパのみ。自由にあちこち動き回れるのは都合がいい。コミケ当日、オレたちは集団でゾロゾロ辺りを俳個した。まずは、KOF系の同人誌販売ブースが並ぶ一帯を歩く。熱狂的ファンの前をわざとゆっくり通り過ぎる。すると、やはり現れる、写真お願い女たち。集団でいると向こうも安心するのか、次から次にカメラを持った女がやってきた。

「え、今いいよいいよ」「へえ、どこから来たの?」

同じゲームを愛する(オレらは愛していないが)者同士、一瞬にして打ち解けられるのが楽でいい。彼女ら、さすがに普段の生活には理解者がいないのだろう、目をらんらんと輝かせているのが可愛いもんだ。

通行のジャマになるからと関係者に追いやられた後は、屋上へ。こちらはあらゆるコスプレイヤーたちが、その成果を披露する場所だ。オレたちはそこでも人気者だった。しかも「終わったら遊びに行こうか」と一声かけるだけで、みんな携帯を教えてくる簡単さ。一緒に来た仲間たちも最初こそ戸惑っていたが、場の雰囲気に慣れるうちに要領をつかんだようだ。気に入らない女は写真撮影だけでさっさと追い返し、こいつはと感じた女だけ連絡先を聞き出す。寄ってくるのはKOFのコスプレをした女だけでなく、他のアニメキャラや私服姿のコもいた。年齢的にはやはり10代半ばから後半が多く、中に子供連れの奥さんまでいたのには驚いた。

そして、当日いちばんいい思いをしたのは、この寒い中、青い短パンで参加した椎拳崇だった。彼はゲーム内で「麻宮アテナ」といら彼女がいる設定になっているため、そのコスプレをした女どもが、わんさか寄ってくるのだ。

思わぬ展開に、ヤツの頬も緩みっぱなしだった。タ方5時、コミケの終わりにそれぞれが聞き出した携帯に電話をかけ、一緒に新宿に繰り出すことになった。内訳は、オレたち男6人に対し女が8人。女が余ってるなんて、こんなにおいしい状況は生まれて初めてだ。
それぞれ私服に着替えた後、車に分乗して新宿に向かったメンバーは、まずは出会いのきっかけを作ってくれたゲームに敬意を表すべく、コマ劇前のゲーセンに直行。KOFの前に陣取った。勝った負けた、強い弱い、わいわいがやがやと対戦する合間に、女どもがそのオタクぶりを発揮し始める。

「紅丸は身長180センチなんだよねえ」

「アテナの誕生日って3月じゃなかった?」

ゲームで遊んでいるだけでは到底身に付かない知識を、うれしそうに披露する彼女ら。同じ仲間だと思われているオレたちも、ボロが出ぬよう適当にあいづちを打ち続けた。しかもゲームそのものも彼女らのほうが上手かったりするから、どうにも面目が立たない。可愛い顔した子が、壊しそうな力でレバーをガシガシやるんだから、世も末か。

ゲーセンの次はカラオケに移動。ここで飲ませて主導権を握ろうって寸法だ。ところが。

「ぽくはお酒飲めないですう」どこの誰になったつもりなのか、1人称を「ぽく」、語尾に「ですう」「ますう」をつける気持ち悪い女が場を仕切る。誰だよ、こんなの連れてきたの。困った空気の中、女たちは歌本の後ろのページばかり見ている。英語の歌ではない。アニメソングを探しているのだ。次々とわけのわからん曲が流れ、歌声喫茶のように同調して歌っ彼女たち。マイクを回された紅丸やテリーも精一杯の記憶をたどり、なんとか雰囲気を壊さぬアニソンを熱唱する。
そして当然ながら、オレにも順番が回ってきた。「京さまも歌ってよー」やばい。歌えるアニソンなんて、一休さんと日本昔話ぐらいだ。あ、マジンガーZがあったか。よし、しょうがない、行け。

そーらにー、そびえるー、くろがねのしろー

ふう、助かった。みんな引いてないよ。
当初からオレには危慎することがあった。彼女らはゲームキャラが好きなだけで、いざ生身の触れ合い(セックス)となると拒絶反応を起こすのではないか、と。ヴァーチャルな世界にのみ生きるオタク。ありがちな現象だ。

がしかし、それはどうやら考えすぎだったようだ。アルコールが入れば彼女らもただの無防備な女に過ぎず、オレ草薙と椎拳崇の2人はなんとかホテルへしけ込むことができたのだった。

その日以来、味をしめたオレたちは、年に2度の密やかな楽しみとしてコミケに通うようになった。ただ立っているだけでチヤホヤされる場所なんて他にどこを探してもないのだから、クセにもなるってもんだ。

寄ってくる女の中から、気に入ったコだけをピックアップして、ゲーセン、カラオケ、そしてホテル。あまりに簡単なので、毎日でもコミケを開いてくれないかと切望したものだ。彼女ら、まさに「ボディが甘いぜ」(キャラの台詞です)状態なのだ。

しかし何度通ってもうまくいかない仲間もいた。少々ルックスのまずい大西がそうだ。ジーンズに赤ベストだけで安く済むからと、テリー・ボガードになっていたヤツは、度重なる失敗に僻易し、キャラの変更を申し出てきた。自分がうまくいかないのはキャラクター設定が間違っているせいじゃないかとの疑問を抱いたのだ。そんなこと勝手にすればいい。ただし一緒に行動する以上、他と同じキャラはまずいし、もちろんオレだって草薙を手放すつもりはない。ヤツは考えた。

主人公、草薙示がゲームの最後に戦う相手、「ルガール」になりきることにしたのだ。クラスが高くなればモテると判断したのだろう。わざわざ新宿のホスト御用達店でワインレツド色のスーツを購入した大西は、その夏のコミケにさっそうと現れ、女の子を率いたカラオケボックスではふんぞりかえって葉巻をくわえ、そのキャラをアピールした。

しかし、結果はバツ。誰のコスプレをしようと、人並の容姿は最低限必要なのだろう。コミケは全国から女の子たちが集まっており、地方のコとはその日限りの関係も後先を心配せずに楽しめる。相手が新潟や福島に住んでいれば、しつこく追いかけられる心配もない。オイシイのは、彼女らマニアは毎回決まって参加している点だ。

前の年に仲良くなった子にコミケ当日電話を入れ、「久しぶり」とかなんとか言いながらまた食えてしまう。ヤツらは生まれた川に戻ってくる鮭のようなものだ。さしずめオレたちはヒグマってとこか。回帰魚たちは、わざわざカラオケなどに連れていくのも面倒なので、会場内のトイレでハメることが多く、なかなか興奮させられる。そしてヤッた後は一言。

「燃えたろ!」

試合に勝った後で吐く台詞だ。単なるシャレなのだが、これが彼女らにはうける。同じ主旨なんだからここもいけるだろうと、神楽坂のディスコで行われたコスプレパーティーに参加したこともある。コスプレした男女がパラパラを踊ったりするイベントだ。が、目論見ははずれた。会場がディスコだからか、男にカッコイイのが多すぎるのだ。要するにオレたちは、コミケ会場というオタク男だらけの空間のみでチヤホヤされているだけで、ちょっと爽やかな連中にはまだまだ太刀打ちできないレベルなんだろう。

★会場が晴海からビッグサイトに移ったころから、男のコスプレイヤーたちにも段々カッコイイ連中が現れ出した気がする。みんな、ここでのナンパのおいしさに気づき始めたのかもしれない。

ここ数回、オレは真女神転生に登場する古いキャラ、宮本明に鞍替えして参加している。どうやらこれがオレの顔にいちばん似ているらしいのだ。自分に似たキャラを選ぶ。これもナンパには重要なポイントだとオレは思っている。ただ、こいつには最後の決め台詞がないのが残念なのだが。